17. オマモリ

先日、久しぶりに我が相方(日々是心意気、駄文其の拾四等参照。)
と呑みに行った。

予定していた時間は5時。

「次の日も仕事が早いので解散を早めにしたい。でも折角呑むのだったら
ガッツリ呑みたいので早く集まろうぜ、コノヤロー」

と、相方が言ってきたのであった。

 

相方とは、かれこれ7年の付き合いとなるが、

約束の時間を守った事は
2回ぐらいしかないヤツなので
集合時間を決めてもあまり意味を成さない。

 

そして、呑みに行って早く切り上げた事なんか1度もない。

きっと今日も終電スレスレコースであろう。

 

 

結論。

呑めるならどうでもヨシ。

 

 

この日、僕は仕事が5時に切り上げられそうもなかったので、相方には先に始めていてくれと伝えていた。
今の時間は既に6時。

始めていてくれとは言っても人を待たせているのは気になる。

いくら待ち合わせ時間通りに来ないとはいえ1時間たった今は流石に来ているはずだ。

僕は待つのはあまり苦にならないが待たせるのはダメで、どうにもイライラムズムズする。

そんな精神状況で仕事をしていた時、僕の携帯が鳴った。
6時15分。

時間にルーズな人は時間にルーズな人を許せない。

これは僕の経験から得た法則であり真実である。
なんと理不尽なものであろうか。

きっと相方はいくら待っても(多分30分程度)連絡一つよこさない僕に
怒りの発信をしてきたに違いない。

仕事場をスッと抜け出し恐る恐る携帯をとった僕は
彼を逆撫でしないように猫なで声で話しはじめた。

 

僕 「ウィース。ゴメンネエ、まだちょっと仕事が抜けられなくてさあ。
もうちょいだからちょっと待っててよ。すぐ終わるからさあ。」

相方 「あ、そう。ウース。わかったー。」

 

 

おかしい。

怒りの発信ではないのか?全然怒りが感じられない。

もう酔っ払ってしまったのか?
いや、それにしては浮かれていない。

 

酔っ払っていたら意味もなく大爆笑、もしくは

意味もなく形態模写。

 

おかしい。何の電話だったのだ?!

その時、僕のセブンセンシズ(第七感)が訴えかけてきた。

漫画的表現をするならば、黒バックに顔面アップで汗を一筋流し、目を見開きながら

 

「ハッ!!」

 

って感じである。

 

謎の光がピョイーンって頭に向かって、もしくは頭から出ていたら更にグーである。

 

まさか?そんな事有り得ないだろう。
それはナイって!ブンシズ(略語)!

しかし、拭いきれない直感を信じ、相方に聞いてみた。

 

僕 「・・・今、どこ?」

 

相方 「ん?今、着いた。(待ち合わせ場所に。)」

 

 

そうだ。忘れていた。

彼は以前、待ち合わせの約束時間になっても来る気配がないので僕が電話をかけた時、
「後十五分ぐらいで着く。スマン。」と言ったが

実はその時まだ自宅に居た。

 

時間の概念が通用しないヤツであった事を忘れていた。

きっと僕の1時間は乙にとっては5分ぐらいの流れでしかないのであろう。

 

まあ良い。
僕も後15分ぐらいで仕事が切り上げられそうだ。あまり待たせずに行けそうだ。と、相方に伝え電話を切った。

そして、キッチリ15分後に仕事を切り上げた僕は相方が待っているビアガーデンに向かう。

向かう途中、一応連絡を入れ、どうしようもなくハラペコだったので
すぐ着くから何か食べ物を注文しておいてくれと頼む。

時間を無駄にしない僕のナイスジャッジである。

それから更に10分後、僕は久方ぶりに相方と再会した。

 

僕 「オイーッス。・・・あれ?食べ物は?まだきてないの?」

相方 「ああ、まだ頼んでないんだよ。」

 

 

僕 「バカヤロウ!!
一体何の為に電話したと思っていやがる!
俺のナイスジャッジをどうしてくれる!

 

相方 「んなもん知るか!!
この地上げ屋が!(意味不明)
今頼め!ああ、今すぐ頼め!!」

 

僕 「何おう!この食物繊維!!

(意味不明。以下略。)」

 

といった最低の立ち上がりで我々の会合はスタートした。

まあいつもと一緒だ。

しかし相方はいつもと違った。

まあ落ち着けと言わんがばかりに一枚の紙を僕にそっと渡す。

それはこんな如何わしいものであった。

 

ただ「聴くだけ」で頭の回転がどんどん速くなる

 

 

内容はこうだ。

『「速聴」とは高速再生させたプログラムをただ「聴いている」だけ。
いつでもどこでも自分のペースで行えるところが魅力です。
また、苦痛を伴う訓練や努力も一切必要ありません。(中略)

私達がふだん受け取る様々な情報は、まず大脳の左半球にある
ウェルニッケ中枢に入ります。
ここは人が言葉を理解する機能を受け持っており、
「速聴」のような速いスピードで情報が入ってくると
ウェルニッケ中枢は神経細胞間の(中略)

「速聴」を続けて1、2ヶ月もすると、
ウェルニッケ中枢の活性化の影響は(中略)

徐々に通常の会話のスピードが
ゆっくりと感じられるようになるため、(後略)

 

 

 

 

コワっ!!

 

一体何がしたいのかわからない。ウェルニッケ中枢ってナニ?!

通常の会話がゆっくり聞こえていいの?!大丈夫?!!

更に、そのチラシの裏面にはこうある。
体験者のお話しコーナーである。

 

『杉山隆志さん(31歳)
以前の私は対人関係でうまくいかない事が多く悩んでいました。

しかし「速聴」を始めて3ヶ月後には

楽に4倍速が聴き取れるようになり、
物事がトントン拍子に進むようになりました。

たとえば、30歳までに優秀プロ代理店の称号を取得するという目標を達成。

また、一戸建て住宅購入。

高級車購入という目標も期限通り達成できました。

それもこれも「速聴」で考え方や性格が180度変わったせいだと思います。』

 

 

 

 

思いません。

 

つーか絶対ウソじゃん。

つーか「称号」って?

もし事実だとしても、何故速く聴き取れるようになっただけで家が買えるのかがワカリマセン。

 

4倍速って!!

 

別に聞こえなくてもイイです。

 

 

こんなツッコミ所満載なモノを用意していたとは・・・

相方よ。

 

 

僕は本気で悔しいです。

 

相方はそんな僕を気にもせず、更にもう一枚の紙を渡してくるのではないか。

相方 「落ち込んだ時にはこれを読んでくれ。」

その一枚のコピー用紙の様なものには、こう記してあった。

 


 

1月8日〜2月4日生まれのあなたへ

 

 

全体運

ツキなし。私欲禁物。
バカにされ、相手にされない事あり。注意。

 

マネー

お金は手に入らない。

 

仕事

方針を変えないと駄目。

 

恋愛

よくない人なので中止。

 

ギャンブル

必ず負ける。

 

勉強

不合格。

 

向上計画

一人になって考える時間を待つ。

 

開運アイテム

スコップ、自宅の庭、
めん類。

 

ラッキーカラー

ブラック。

 

 

 

Dr.コパ

 

 

 

 

 

最低も最低。
底辺じゃないッスか!!!

 

こんな人生イヤだよう!
良かったよう、9月生まれで!

そんな今にも泣きそうな僕を見て、相方は

 

相方 「こんなに悲惨な人生を今、おくってらっしゃる人がいるんだ。
自分はまだ余裕で幸せだと感じられるだろう?」

と、ニヤッと笑いながら相方は言った。

そして、こうも言った。

 

相方 「これは自分のお守りだったがオマエにやろう。」

と。

 

本気で悔しいです。

 

なんて素敵なモノをゲットしたんだ!君は!!

チキショーウッ!!!

 

 

そんなこんなで盛り上がった会合。

その後、カラオケに行って、終電コースだったのは言うまでもない。

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