29. ジケンボ

全てのミステリファンに捧ぐ

 

 

〜 究明編 〜

 

少年探偵 「朝早くから、この場所へ皆さんに集まってもらったのは他でもありません。

この連続殺人に隠された哀しい真実と・・・
・・・ 真犯人の正体をお話しするためです。」

 

探偵の幼馴染 「ええぇ!」

 

幼馴染の友 「そ、そんな!おまえにはわかったってのか!?
一体誰なんだ!真犯人ってのは!」

 

 「皆さん、落ち着いて下さい。
・・・真犯人の正体を明かす前に、この事件を振り返ってみましょう。

まず最初に、一昨日の朝食中、全員の見ている前で脅迫状がテーブルに落ちてきた。

その脅迫状には、血文字で復習と書いてあった・・・

これは多分復讐の間違いだろうと思う。

そしてその4時間後、僕らと同じこの山荘のロッジの宿泊客である伊地知さんが
自室のベッドの上で刺殺体で見つかった・・・

そこまではいいですね?」

 

 「え、ええ・・・」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・そして夕食時には、上野さんの食べていた

カツ丼の

カツとゴハンの間からまたしても脅迫状が出てきた。

そこには前回と同じように、血文字で

マグロ丼と書いてあった・・・

この時は全員で「イヤ、カツ丼だよ!」と突っ込んだ事を思い出して欲しい。

牛島料理長がその時、『大爆笑』したろう?」

 

 「あ・・・!」

 

 「そうだったな・・・確かに『大爆笑』していたな・・・
あれは爆笑ではない・・・

『大爆笑』だった・・・

 

 「そう、『大爆笑』です。

とりあえず、思い出させておいて何だけど、

その事はいっそ忘れて欲しい。いや、忘れて下さい。

この際なかった事にしましょう。

そして、
食事中にトイレに立った『大爆笑』牛島料理長が江上さんの死体を発見した。

その変わり果てた江上さんの姿に・・・

トゥーシューズを履いてファイティングポーズをとっている江上さんの姿を見た
『大爆笑』牛島料理長が、

その場でショック死してしまった。半笑いのまま。

確かそうでしたね?」

 

 「って言うか・・・」

 

 「大爆笑の事は忘れて欲しいんじゃなかったのか?!」

 

 「・・・・・・・・・チッ。

 

 「!!」

 

 「舌打ちか?!今のは舌打ちなのか?!!」

 

 「そして次の日の朝、外の吹雪が強くなっているのに気付いた。
これでは警察もここまでやって来れない。
吹雪の影響で電話も不通になってしまった。携帯電話も繋がらない。
何とかして外と連絡を取ろうと玄関ドアを開けた。

そこには半分雪に埋もれ、頭から血を流して死んでいる上野さんがいた・・・

上野さんのすぐ脇に凶器と思われる血のついた

わらび餅がありましたね?

おそらく上野さんはわらび餅』で撲殺されたのです。

『わらび餅』の下には例の脅迫状が挟まってました。
血文字で『マグロ丼』と書かれていたはずの脅迫状・・・

それが何故、

文字マグロ丼』

と書かれている脅迫状に変わっていたのか!!?

そこに真犯人の心理的トリックが隠されているのです!!」

 

 「ウソ!!」

 

 「絵文字・・・上マグロ丼の絵文字って・・・一体、誰が真犯人なんだ!!?」

 

 「・・・犯人の正体を知る前に、いや、
その為には12年前の忌まわしい事実を話さなければならない。

そもそも、今、僕等がいるこのスキーロッジ 『アップリケ』 は昔、スキーロッジではなかった。』

 

 「え・・・?」

 

 「・・・・・」

 

 「そう・・・ここは、12年前までは、

『スキー場初!マグロ丼専門店!』というキャッチコピーで

気味が悪い程の違和感を全面に醸し出したマグロ丼専門店だったんだ!」

 

 「!!!それって・・・」

 

 「!!何故スキー場でマグロ丼を・・・!!」

 

 「それにはもちろん理由があった・・・。
ここのマスターであった有園さんは、

毎日、マグロ丼が食べたかったんじゃないかなあ?

 

 「ええ?!」

 

 「何故、問いかける?!
はっきりしないの?!予想なのか?!」

 

 「・・・そして12年前の今日、その『マグロ丼』をめぐって血なまぐさい惨劇が起こった・・・。
・・・・・その惨劇は各人の御想像にお任せする事にします。」

 

 「ウソでしょ?そんな悲惨な事があったなんて・・・」

 

 「想像すんなよ!

って言うか何だよ!マグロ丼がらみの惨劇って!」

 

 「・・・って訳で、

犯人はこの中にいる!!

 

 「?!」

 

 「な・・・」

 

 「・・・ではここで、
本人の挙手、または推薦を受け付けます。

ハイ、ないようなので
放課後のアップリケ こと、真犯人は

 

何時の間にかツッコミ役になっていたオマエだ!!!

 

 「!!!!!」

 

 「・・・はっ!何を言い出すかと思ったら・・・。
一体、何で俺が犯人なんだよ!

そして放課後の意味はなんなんだよ!

証拠は?
証拠はあんのかよ!!」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・フン!何の証拠もないのに俺を犯人扱いして一体どう言うつもりだよ!
あてずっぽうもいいかげんにしろよ!」

 

 「・・・・・ふふふ」

 

 「??」

 

 「な、何が可笑しいんだ!」

 

 「そりゃ可笑しいに決まってるさ。
だって、たった今、君は

自分が『犯人である』という

証言をしてしまったのだからね!!

 

 「!!」

 

 「な・・・なんだって・・・!

一体どう言う事だよ!!」

 

 「では説明しよう。
今、君は自分が犯人と指摘され、咄嗟にこう言ってしまった。

『放課後の意味はなんなんだよ!』

 

・・・それは実際、僕にもわかりません。スイマセンでした。
雰囲気で付けてみました。

いいじゃん。盛り上がるじゃんか!!(逆ギレ)」

 

 「ちょ・・・」

 

 「キミは『・・・』とか記号ばかりでウザいから黙っていなさい。

まぁイイ。話を戻して説明を続けましょう。

『放課後の意味はなんなんだよ!』と言ったね。
そして、その後にこう言ってしまいましたね?

証拠はあんのかよ?!

と。」

 

 「それが一体・・・?」

 

 「ああ、言ったともさ。
だから証拠を見せてみろって言ってんだよ!」

 

 「・・・まだわからないんですか?
君が犯してしまった致命的なミスを。」

 

 「??」

 

 「な、何だよ?!何が言いたいんだよ!」

 

 「・・・そうですか・・・。
では僕の口から言って差し上げましょう。

君が犯人である証拠を。

 

 「・・・・・」

 

 「・・・言ってみろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読者への挑戦

かねてより敬愛してやまぬ先人の例にのっとり、それが無謀かつ不遜な行為となるのを重々承知した上で、

作者は敬愛なる読者諸君に『挑戦』する!

幼馴染の友人が伊地知氏および、江上氏を殺害した証拠とは?

また、その答えを導く為の論理的根拠は?

ここまでの「究明編」で読者諸君は、上記の問題に対する正しい解答を示しうるに
必要な情報の全てを入手されている。

読者諸君は全てのトリックを見破り、真犯人である『証拠』を解き明かせるか?

 

(これより先の文章は探偵が証拠を叩きつける場面です。
作者の挑戦に応じた方は、推理した後にお読み下さい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いいですか?
たった今、僕は君を犯人呼ばわりした。
もし君が真犯人であれば、危険極まりない、最低な事態に直面しています。

近隣への連絡も取ることの出来ない閉ざされた山荘・・・
逃げる事も許されない、いわば袋の鼠です。

このような状況の場合、
犯人と疑われた人間が、いの一番に

『証拠を』うんぬん言う場合、

180パーの確立で

真犯人間違いナシなんですよ!

 

『コナン』や、『金田一』や、『古畑』や、『火サス』ばりに

視聴者にはバレバレなんですよ!!!

もう、それ言った時点で君の負けです。

って言うか

 

証拠なんてないもん!

 

 「証拠はないのね!?!」

 

 「・・・・・」

 

 「さあ、もう観念するんだ。
『放課後のアップリケ』。
もうこれ以上、言い逃れは出来ないと思うぞ。」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・

・・・フッ。

そこまでバレてしまっているのなら仕方がない・・・
言い逃れなんかしないさ。」

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・何故・・・?」

 

 「 そう・・・12年前に起きた、『マグロ丼』をめぐっての血なまぐさい惨劇・・・
マグロ丼専門店のマスターだった有園が殺された・・・
俺の父親さ・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

 「!!」

 

 「父親を殺した犯人、伊地知、江上、そして牛島の3人が揃ってここに集まる事を知った俺は
この計画を・・・3人の殺害計画を実行に移したのさ・・・。

ハ!まぁ、牛島は自分でショック死しちまいやがって、お陰で俺の手間も省けたがな。」

 

 「・・・・・」

 

 「そんな・・・」

 

 「俺の父親を殺しておいて、安穏と暮らし続け、更にはその全員が集まって昔を懐かしもうってのか!?
俺には、そんな事許す事は出来ない!
例え何があろうと、俺はやつらを許す事なんかできる訳がない!

そうさ!俺が・・・
この俺が

放課後のアップリケ』さ!!

 

 

 

 

 「マジで?!

 

 

 

 「推理、当てずっぽうだったのかよ!!

 

 

 

 

 

 

 

次回、解決編に続く。(ウソ)

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