ショート 1

このショートのコーナーは、メインの「ダブンズヘブン」に書くには至らない、
または、そこまで昇華させてやれない駄文を扱ってます。

決して面倒臭い訳ではありません。
困った時のショート・ショート(笑)。

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子供の頃、全く興味を持たない「味」がある。

僕にとっては 「セロリ」 であり、 「ウニ」 であった。

だがこれがどうしたことか、大人に近付けば近付く程 
「見たくもない物」から「大好物」に変わっていく。
不思議なものだ。

「茶碗蒸」も子供の頃は、見た感じのまま「プリン」風な味と勘違いして頬張って見たものの
圧倒的な「和」の味に完全にノックアウトされた覚えがあるが
これもやはり大人になった今では好んで食している。

属に言う「大人の味」とは味を勘違いしてしまっている食べ物ではなかろうかとさえ思えてくる。

「セロリ」も「ウニ」も食べる前はシャレにならない程美味い物だと考えていた。
そして実際に食べて見ると味が想像と全然違う。

その落差がワイルドであればあるほど
ワイルドな大人になるまでは確実に口にしないであろう。

きっと「セロリ」も「ウニ」も「塩辛」も「白子」等も
子供が始めて食べる時、想像の味と同じだったら美味いと感じるのではないのであろうか?

 

話は変わるが、この間、珍しい物を見かけた。

「カブトムシにこれからなるであろう幼虫」である。
(カブトムシの幼虫とクワガタの幼虫の区別が付かないので)

まだ成虫になる時期ではないのでブッチギリの幼虫姿で地上に出てしまっていた。

これは可哀想だ。

これでは夏の全盛期にハナタレ小僧に狩られる事が出来ない。

僕は幼虫をそっと手の平に乗せ近くの地面を軽く掘ってやり、その中にポソっと入れてやった。

手の平には、地上に長くいた為傷が出来てしまったのであろうか、
幼虫から滲み出て来た謎の黒っぽい液体が付いていた。

「地中に戻してやったが長くあるまい・・・」

そう考える頭の片隅に

 

「幼虫ってちょっと美味しそう」

と思ってしまった。

 

これも実際食べたら「大人の味」であって
かなりワイルドにならないと
食べられない代物であろうな。
と思ったある春の日。

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