30. エイユウデンセツ・エピソード2

以前書いた駄文でなかなか反響のあった「英雄伝説」。
今回はその英雄伝説に登場した 「英雄 Aさん」 の話である。

 

Aさんは会社の同僚で、毎日顔を合わせていた仲だ。
(現在は何処か、冒険の旅に旅立たれたと風の噂で聞く)

その時はいつもの様に仕事場に集合し、Aさん等、同僚と共に仕事の準備を始めていた。

準備はすぐ終わるので、仕事開始までの時間は談笑に花が咲く。

英雄伝説 エピソード1』もこの時間帯に聞いた話である。

 

もちろん花は満開であった。

 

『エピソード1』以来、Aさんの満開話はナリを潜めていたが
時折見せるビックパンチを皆、恐れさえしていた。

ビックパンチが連発されない訳はもちろんある。

それは

阪神が負けているとションボリしているからである。
(阪神ファン)

 

今から書く話を聞いた時は阪神が勝っていたかは定かではないが、
その場に居た全員は口々に

「あまりの強烈なビッグパンチにその後の仕事が全く手につかなかった」

と語った。

そんな核爆級のパンチを話すには、準備が必要。

で、なければ死は必至である。

どんな料理も下ごしらえが大事であるのだ。

 

--------------------下ごしらえ--------------------

僕は最近、時々ではあるがプールに泳ぎに行く。

幼少時はスイミングスクールにも通っていたし、夏にもなれば海かプールに行きたくなる。
つまり、泳ぐの大好き。

最近、ビールの呑みすぎで少し気になってきたオナカの事もあるし、
いっちょ行きますか!って感じで行った横浜スポーツセンター。

ここには25mプールがあり1時間400円ぐらいで(忘れた)泳ぎ放題である。

料金を支払い、更衣室へ直行。
真っ赤な水着に着替え、いざ出陣!

プールが呼んでいる。

 

多分。

 

久しぶりのプールに胸は高鳴り、気分は高揚。

目はランラン。

残念ながら水中メガネをこの日は忘れてしまった為、

テンションは
3割減であったけれど。
(何のテンションかは詮索しない方向で。)

 

軽く準備体操をしてから入水。
血沸き肉踊っている為、準備運動はかなり適当である。

久しぶりのプールは僕を暖かく迎え入れてくれたようだ。
プールの神の声が僕の耳には聞こえてくる。

 

「さあ。思う存分、泳ぐが良い。
野生の、

男子としての本能丸出しで。

 

 

プールの神よ。

 

 

 

サンクス。

 

僕は貴方の思うがままに泳ぐ事を誓いましょう。
そう、野生のままに。

本能のままに。

 

女子の後ろを追っかけていく事を誓います。

 

って訳で、狙いを定めてコースへゴー。(最低)

泳ぎ人が多いこのプールでは、ハーモニカの入れ物が繋がっているようなヤツでコースが区切られていて、泳いで行く進行方向も決まっている。

第一コースは『行き』
第二コースは『帰り』って感じに。

と、言う事はもちろん順番もある。

僕は若い女子の後ろに順番を取った。

本能が超スムーズに僕を順番に入れた。

若い女子の後ろに。
(二回目)

 

よし!燃えるんだ!
僕の小宇宙(コスモ)!!

前を泳ぐターゲットに狙いをつけるんだ!

絶対に喰らいついていくのだ!(卑猥)

平泳ぎに喰らいついていくのだ!!!(超卑猥)

 

 

 

 

・・・五分後

僕は真っ白な灰になっていた。

 

それは、平泳ぎに喰らいつき、言い表せないような感動を得た為ではなく、
ドンドン前の女子に引き離されていく僕の体力、水泳力の無さに燃え尽きていた。

 

喰らいつくとか言ってる場合ではない。

息をさせて下さい。お願いします。

ってな具合である。

前を行く平女(平泳ぎ女子の略語)が15メーター進んだ所で。僕は足を付き、
平女が25メーター泳ぎきった頃に、僕は20メーターギリギリのラインにいる。

 

これじゃあ足の指すら見えないッス!!

 

その後、本能の赴くままに(笑)数回のチャレンジを試みるが

全て失敗に終わる。

 

「平女」は見果てぬ夢であったのか?

僕は失意のドン底な気持ちを抱きつつ、更衣室に戻りうなだれた。

その時、頬を伝う水滴は果たして
涙だったのか、消毒水だったのか。

今では誰も知る由もない。

 

--------------------下ごしらえ終了--------------------

 

と、言うような話を僕から英雄Aさんに話した。

今となってはどういう切欠でこんな話を始めたのかはわからない。

 

しかし、明らかに僕は過ちを犯してしまったのだ。

イヤ、厳密に言えばそれは定かではない。
だが確実に、そして正確に、

英雄の「英雄魂」に向けて狂気の銃弾を放ってしまったのだ。

 

英雄は少しの沈黙の後、こう言った。

「俺も前はよく、そこのプールに行ってましたよ。」

と。

 

そして彼は続けてこうも言う。

 

「俺もよく後を追っかけて行ったもんですよ。(笑)」

と。

 

 

流石、英雄

話がよくわかる。

しかし、彼は違った。

英雄である彼は、一般市民である僕とは違ったのである。

 

 

 

 

 

 

「俺、泳ぎが得意だったからさあ、前を行く遅い平女に

 

 

 

 

あえてクロールで
突っ込んだ事あるよ。

 

 

 

『あえて』
(敢えて→1.一向に。2.強いて。

 

 

そう、彼は、「英雄Aさん」は

狙いをつけた前を行く泳ぎのスピードの遅い平女に

 

強いて(意=無理矢理に

英雄クロールでダイビング

していたのだと言う。

 

 

その場に居た同僚らの

犯罪スレスレだの言葉に
首を少し振りつつ、指を1本口に当てて

 

「シィーだよ。」

 

って感じに少年の心をいつまでも忘れない風な英雄を僕は一生涯忘れない。

 

忘れたくても忘れられない。(笑)

 

英雄よ。

いや、英雄王よ、

 

いつまでも捕まらないでいて下さい。

 

 

英雄王のエロ魂よ。

永遠に。(笑)

BACK STORYNEXT STORY

7's HEAVEN's heaven